賞の歴史

インターナショナルアカデミックフォーラム(IAFOR)映画選考会として2012年に設立されたこの競技会は、2014年にIAFORドキュメンタリーフィルムアワードとして、新たなコンセプトのもとに生まれ変わりました。ドキュメンタリーフィルムという領域は、学術的シンクタンクとして国際的、多文化、そして学問の境界を越えた議論と意見交換を促進しようとするIAFORのビジョンとまさに軌を一としています。

IAFORドキュメンタリー映画賞はIAFOR並びにAsian Conference on Media and Mass Communication (MediAsia)、そしてAsian Conference on Film & Documentary (FilmAsia)に支えられています。この二つのカンファレンスは、映像・メディア業界のプロフェッショナルのためのイベントとして、着実に成長してきました。過去のIAFORドキュメンタリー映画賞とIAFOR映画選考会の入賞者は以下に掲載される通りです。

 

2015年入賞者


IDFA名誉賞(2015年)

「メス・アイナクの遺跡を救う」

ブレント・イー・ホフマン

映画について
映画“メス・アイナクの遺跡を救う”は、アフガニスタンの考古学者カディール・ティモリ博士が、5000年の仏教の歴史を持つアフガニスタンンの考古学遺跡を、刻々と迫りくる破壊から守るために時間と戦う姿を追っています。

中国政府所有の鉱山会社が、この 考古学遺跡の直下に埋まっている1,000億ドル相当の銅を採掘しようと この太古からの地に迫ってきており、この映画はその文化保護と経済利益獲得のせめぎ合い を、アフガニスタンの考古学者達とメス・アイナク付近で働き生きる現地の村人たちの視点から検証しています。

カディール・ティモリ博士と彼の仲間の考古学者たちは、中国人やタリバン、そして地元政治勢力たちを相手に、不可能とも思える闘いに立ち向かっています。それは祖国アフガニスタンの歴史や仏教そのものの歴史を書き直すほどの価値のある 文化遺跡を破壊の手から守ろうとしているのです。

 


Trailer: Marovo Carver from Elliot Spencer on Vimeo.

大賞・ニューカマーMINI(2015年)

「マロヴォ・カーヴァー」

エリオット・スペンサー

映画について
タシロはソロモンの伝統的な木彫家(カーヴァー)です。この木彫はソロモン島の代表的な伝統工芸で、彼を取りまく自然の美を表現しています。この工芸によって、彼は家族の生計を立てています。

この作品は、これまで以上に近代化の進むソロモン島で、島の人々の暮らしや直面する課題を美しい映像とともに描き出しています。
パラダイスのような島で撮影され、タシロ自身が語るマロヴォ語による穏やかな語り口の物語は、観る者を世界遺産に登録されているマロヴォ環礁へといざないます。過去、現在、未来が一つになった、夢のような瞬間を捉えています。

 


The Land of Many Palaces (Trailer) from Adam James Smith on Vimeo.

最優秀ニューカマー長編賞(2015年)

「ザ・ランド・オブ・メニー・パレス」

アダム・ジェイムス・スミス ソン・ティン

映画について
中国内モンゴル自治区のオルドス市では、政府の地域現代化計画によって、数千人の農民達が新しい街に移住しています。「ザ・ランド・オブ・メニー・パレス」は農民たちに移住を説得する一人の政府役人と、残っている人たちの中の一人の姿を追っています。中国政府は、これからの20年間で、中国全土で約2億5千万人の農民達の移住を実施する予定で、この映画はすでに中国全土で具体化し始めているプロセスを描き出しています。

 


TRAILER "GAZELLE – THE LOVE ISSUE" from Cesar Terranova on Vimeo.

最優秀プロフェッショナル長編賞(2015年)

「ガゼルー・ラブ・イシュー」

セザール・テラノヴァ

映画について
パオロは45歳のブラジル人フライトアテンダント。その他に、彼の「分身」であるガゼルを、疲れ知らずに創り出すことで世界的に人気を集めている人物でもあります。大胆かつ綿密に作られたコスチュームをまとって世界中のクラブに現れるガゼルは生きた彫刻であり、魔法のように姿を変えていく夜の生きものです。

しかし、ガゼルでいることは簡単ではありません。

彼の7年越しのパートナーであるエリックの突然の悲劇的な死により、パオロは人生の変革を強いられます。パオロはHIV陽性ですがこれまでに体調を崩したことはありませんが、今回のことは彼にとっては初めての生命の危機と感じられました。生きるため、彼は意識的な変革を開始し、彼の人生に必要なことを選り分けることから始めました。冒頭の深い悲しみに続いて、彼は分身を深い感情や夢を表すために利用するようになり、それに従ってガゼルは彼の人生においてより強い存在となっていくのを目撃することになります。

 


2014年入賞者


大賞・ニューカマーMINI(2014年)

“The Changing Place of Making”

ジャック・ワイズマン (カナダ)

映画について
“The Changing Place of Making” は、一つの世代から次の世代へと、生まれながらに備わっていた遺産が受け継がれていくそのプロセスを描き、理解しようという試みです。自分自身と父、そして父の製作物をめぐる力関係を考えながら私は父の遺産を受け入れていきます。創造性とは、能動的に選び取ったものではなかったのです。

 


ニューカマー短編賞 (2014年)

“Lines of Flight”

サル・ブラウンとマーティン・ウッド (英国)

映画について
かすかな戦慄と深い洞察――映画”Lines of Flight”は、社会的・心理的・物理的な近代的生活の束縛を、息を呑むような命綱無しのロッククライミングと対比することで、産業都市とイングランド北部のペナイン山脈の大地という二つの舞台を結びつけます。英国のもっとも美しい場所で、人を型にはめ窃取するような経済的、社会的、そして組織的束縛から逃れることの冒険と心震える喜びに焦点をあてながら、“飛行の軌跡”は見る者の心を打ちます。

 


最優秀プロフェッショナル短編賞(2014年)

「スポイラー」

サンナ・ロバーズ(オランダ)

映画について
この青春ドラマではカーニバルもある大行進のために8メートル50センチの台車を建てようとしている友人5人の間の人間関係 を追っています。カーニバルが近づくにつれ、彼らはますます プレッシャーにさらされていきます。

 


最優秀ニューカマー長編賞(2014年)

「誰でもの場所」

アンジェロス・ラリス&ハンス・ウーリック・グーヘル(ベルギー)

映画について
アンジェロス・ラリス&ハンス・ウーリック・グーヘル(ベルギー)
映画について

虐殺が起きた後その犠牲者そして加害者すべての人にとって「誰でもの場所」を作ることは果たして可能でしょうか。この映画は共に育ち、同じルワンダの小さな町の山で遊んだ、 2人の子供 、ベノーとターシスを描いたドキュメンタリー作品です。彼らを引き裂いたのはベノーがツチ族、ターシスはフツ族に属していたという事実です。

1994年、ルワンダでツチ族に対する虐殺が行われている間、ベノーの家族全員は殺されました。そして、ターシスの父親は虐殺を実行する側の1人でした。20年後の現在、虐殺の加害者と生存者はベノーとターシスの故郷でまた隣同士で暮らしています。映画「誰でもの場所」は大虐殺の後の深く傷ついたルワンダ社会が はかない和解のためにどれだけ苦労しているかを描いています。映画「誰でもの場所」はベノーとターシスの視点から4年以上かけて制作したドキュメンタリー映画で、虐殺の心理的、社会的影響について一石を投じています。また、若い生き残り世代の中に溢れる愛、憎しみ、そして許しへの欲求を描いています。

 


最優秀プロフェッショナル長編賞(2014年)

「聖なるキッチン」

ヴァレリー・バーテュー&フィリッペ・ウィティス(ベルギー)

映画について
カラフルな果物とご飯、巨大な鍋、匿名のボランティアたちが訪問者を食べさせるために無料簡易食堂に向かいます。我々が目撃したのは、シーク教の伝統である共通の“聖なるキッチン”で相手の宗教も人種も階級も職業も関係なく提供される無料の食事です。シーク教の総本山、アムリッツァルにある黄金寺院で撮られたこの言語に絶する美しい映像は、何百万人もの人々が一斉に動き10万食を提供するこの聖地独特の一面を映しだしています。この映画はまた視覚に訴える印象的な随筆でもあります。慈善活動や博愛主義の意義について洞察を示し、文化、自然、そして生命保持に必要な行動としての“食物”への深い考察をもたらしています。